研究概要 |
地域の食生活の現状と継承されてきた食性及び幼児の食環境の現状を把握し、地域特有の食性の伝承を幼児期における食教育として実践し、その効果を明らかにする。 地域の食生活の現状として岐阜県5地域(飛騨,西濃,中濃,東濃,岐阜)を対象地区とし食性を把握することを目的に、各地域に10年以上居住している家庭の主な調理担当者82名を対象に聞き取り調査を実施し、日本の伝統的な食品の中でも主食,副食を問わず様々な料理に用いられる豆類・いも類を使った行事食の現状について調べた。その結果、そら豆を餡にしたみょうがぼちは、西濃地域13.3%,岐阜地域8.8%の家庭で食べられており、このことは西濃,岐阜地域はそら豆の生産量が多く、ぼちを包むみょうがの葉の生育に適しているという地理的条件が関連していた。飛騨地域は行事食が自家製である割合が91%と他の地域に比べて高かった。食性が地域によって異なっていたことから地域ごとにその特性を明らかにするため、現在も行事食を作る家庭の多い飛騨地域の神岡町において、対象者を農家,商家,鉱山従事者と家業により分類し、行事食の調理加工方法について聞き取り調査を行った。その結果、大晦日及び正月の行事食である鰤の調理方法は、焼物にする家庭が89%,煮物が11%であり地区差がみられ、地域の食性は地区差及び家業要因が影響していることがわかった。 地域の食性に関する食教育を行うにあたり、対象となる幼児の食環境の現状を把握するため、関市A保育園児の保護者47名を対象に、家庭での共食及び食事中の食に関わる会話といった食事状況と七夕行事食の喫食率及び由来に関する知識についてアンケート調査を行った結果、平日の朝食は他の食事に比べて家族全員で食べている家庭の割合が19%と低く、毎日食事中に食べ物の話をする家庭は全体の30%であった。七夕行事食については、喫食率が7%であり、食べる由来を知っている保護者は21%であった。これより幼児の食環境は、食事をしながら食についての話をする時間は少なく、行事食を食べる風習が薄れてきていることが明らかとなった。 今後は、食性は地域によって異なり家庭での伝承が薄れてきているという調査結果を基に、地域で食性を伝承しそれを家庭へとフィードバックさせることを目的とした食教育内容を検討し、ビデオ,歌,踊り,ゲームなどの媒体及び実体験により継続して行い、幼児の家庭での食事状況や食性の伝承にどのように影響するのかを明らかにしていく。
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