今年度はサラダの材料など生野菜として食する機会が多い10種類の野菜(キャベツ・キュウリ・ダイコン・タマネギ・トマト・ナガネギ・ニンジン・ピーマン・ミズナ・レタス)を試料とし、細菌を分離後、研究期間を考慮してグラム陰性菌についてのみ属レベルでの同定および薬剤感受性試験を行った。薬剤感受性試験は、現在臨床現場で使用されている6系統12種類の抗菌薬(アミノグリコシド系3種、フルオロキノロン系3種、セファロスポリン系2種、カルバペネム系2種、オキサセフェム系1種およびモノバクタム系1種)について、ディスク拡散法を用いて行った。10種類の試料より385株のグラム陰性菌が分離され、同定の結果、Mebsiella属87株(22.6%)、Serratia属29株(7.5%)、Enterobacter属20株(5.2%)などの腸内細菌科の細菌が385株中303株(78.7%)と多数分離された。ディスク拡散法により1種類以上の抗菌薬に耐性を示した株は385株中61株(15.8%)であった。特にカルバペネム系抗菌薬(イミペネム・メロペネム)に対し高度耐性を示す株が19株であり、これらの株ではモノバクタム系にも高度耐性、アミノグリコシド系、セファロスポリン系(セフォタキシム)に中等度耐性を示した。また現在のところセファロスポリン系抗菌薬セフタジジムやフルオロキノロン系抗菌薬シプロフロキサシン、レボフロキサシンに耐性株は検出されていない。分離菌株の抗菌薬耐性について試料別に検討すると、ミズナでは4系統、レタスでは5系統の抗菌薬に多剤耐性を示す菌株が認められ、それぞれの菌株について同定を行ったところミズナではFlavobacterium属、Klebsiella属、レタスではAeinetobacter属、Salmonella属に属する細菌であった。現在、薬剤耐性遺伝子が既知のものであるか、プラスミド性あるいは染色体上に存在しているのかなどを検討中である。
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