本研究は、腎不全により引き起こされるリン代謝異常に注目し、高リン血症改善効果が期待できると報告されている「わかめ」のリン酸吸収に与える影響を検討することにより、腎不全の食事療法や食生活改善のEBNに貢献することを目的とする。 今年度の研究実績概要は、以下の通りである。1)腎不全モデル動物の作成;ウイスター系雄ラット(4週齢)にリン含量1.5%、カルシウム含量0.6%の高リン食を与え、代謝ケージを用いて一定期間おきに採血・採尿し、血中のリン、カルシウム、クレアチニン、尿素窒素濃度、尿中のリン、カルシウム、クレアチニン濃度を測定して腎機能をモニターした。ラットは高リン食投与後約1か月で腎機能低下が確認され、高リン血症の発症が確認された。しかし、ラットは腎不全までには至っておらず、高リン食投与のみでは限界があると思われるので、高リン食にアデニンを添加する特別食の検討が必要である。2)添加食品の安全性の確認試験;ウイスター系雄ラット(4週齢)に3、5、7、10%のわかめ添加食、0.5、1、3%のアルギン酸添加食、0.5、1、3%のフコイダン添加食を与え6週間飼育した。その結果、腸管、腎臓、肝臓に食品投与による影響は見られなかった。しかし、7、10%のわかめ添加食、3%アルギン酸添加食、3%フコイダン添加食を与えたラットは、便の性状に変化(下痢)が一部観察された。3)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による生体サンプルのリン酸濃度の測定;上記の高リン血症と食物繊維添加食のラットの腎臓を用いて、急速膜ろ過法によりNon-RIでリン酸の取込み実験を行った。急速膜ろ過法で得られたサンプル(ろ紙)は、細粉して超純粋に浸し、取り込まれたリンを容出させた。そして、電気伝導度測定器(サプレッサー方式)を用いたイオンクロマトグラフにより、リン酸の濃度測定を行った。しかし、生体のリン酸の低いため、測定結果の再現性が低く信頼性に欠けるデーターしか得られなかった。よって、サンプルの濃縮を行うなどサンプル調整にさらなる工夫が必要と考える。
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