研究概要 |
1.目的 本研究において平成16年度は,我が国で汎用されている市販のノンカット状態の生食用野菜に大腸菌O157(以下O157と略す)およびSalmonella Enteritidis(以下SEと略す)を接種し,温度別にその消長を調べることと同時に保存に伴うこれらの菌の様態変化などを走査型電子顕微鏡を用いて明らかにすることを目的として研究を行った. 2.材料および方法 市販の5種類のノンカット状態の生食用野菜(キュウリ,キャベツ,ニンジン,ナス,ミニトマト)にO157またはSEを接種し,それぞれを密閉容器内に10℃および20℃で保存し,菌接種直後,7日後および14日後のO157またはSEの菌数を調べた.また,購入時の野菜表面および,O157またはSEを接種し10℃,20℃で10日間保存したキュウリ表面を走査型電子顕微鏡で観察した. 3.結果および考察 O157は菌接種後,10℃保存ではニンジン,ナス,キャベツにおいて14日後に接種菌数よりやや減少したが,20℃保存ではすべての野菜において接種した菌数と14日後の菌数とほぼ差は見られなかった.SEは菌接種後,10℃保存ではすべての野菜で14日後に接種した菌数よりもやや減少したが,20℃保存ではO157と同様にすべての野菜において14日後までほぼ菌数の変化は見られなかった.これらの結果から,ノンカット野菜に接種したO157およびSEは,常温または低温のいずれの条件下でも14日程度の期間を通じて接種菌数がほぼ温存されることが判明した.購入時の野菜表面を走査型電子顕微鏡により観察したところ,野菜の微細な表面組織は野菜種によって独自の網目構造をしており,微小なゴミ様粒子や雑菌が網目構造の表面組織上に散在して付着している様子が観察された.O157またはSEを接種したキュウリの表面では両菌ともピリ様物質によりキュウリの表面組織や菌同士が強く付着している状態が観察された.このことから,O157やSEはキュウリ表面に汚染した後,ピリ様突起物を産生し菌同士やキュウリの表面に固着した状態で生残することが考えられた.
|