本年度の研究概要 昨年度までにノンカットの生食用野菜に汚染した大腸菌O157(以下O157と略す)などは野菜表面上でピリ様物質により、表面組織や菌同士が強く付着した状態で生残することを明らかにした。本年度は、そのような状態の野菜に有効な殺菌条件を明らかにすることを目的とした。 1.O157を接種し、数日間保存した野菜(キュウリ、キャベツ、レタス)に非加熱殺菌法として次亜塩素酸ナトリウム溶液や超音波処理との併用など数種類の条件で殺菌処理を行い、その殺菌効果を検討した。その結果、キュウリでは、次亜塩素酸ナトリウム溶液の温度を上げて、超音波処理を併用した場合、O157殺菌効果が得られた。キャベツ、レタスにおいては、界面活性剤を加えた次亜塩素酸ナトリウム溶液に超音波処理を併用することでO157殺菌効果が得られた。しかし、これらの殺菌法ではO157を殺滅するには至らなかった。今後、他の非加熱殺菌法による検討も必要であると考えられる。 2.殺菌処理後の各野菜の表面を電子顕微鏡にて観察した結果、殺菌効果の有無に関わらず、いずれの野菜表面でもバイオフィルム様の塊が観察された。野菜表面に汚染したO157が1週間程度経過するとバイオフィルム化する可能性も推察きれたが、O157の生残部位を特定するには至らなかった。このことから、野菜表面のO157などに対する殺菌効果は野菜種の表面構造の違いにより異なるのではなく、菌体がバイオフィルム状になっているかが関係しているのではないかと推察された。今後はバイオフィルム状になっている菌に対する効果的な殺菌法を検討する必要があると考えられる。
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