食品には食感が美味しさの要因となる素材が数多く存在するが、その食感は流通・調理条件で大きく異なる。ニーズ対応型食感の提案には、流通・調理過程のテクスチャー挙動の科学的解明が重要であり、生産から消費に至るテクスチャー特性を定量・追跡できる統一的手法の開発が必要と考える。本研究ではニンジンなどの根菜類を対象にしたテクスチャー追跡手法の開発を目的とした。その簡便な手法として、試料形状の影響を受け難く、テクスチャー特性を多面的に数値化できる手法を検討した。具体的には、貫入深度1mm及び2mmにおける硬度を連続的に計測する微小2バイト貫入試験法を考案し、その有効性を検証した。また微小領域計測用に直径2mmのプローブを採用し、ニンジンの部位別硬度を計測した。試料調製方法は試料を約2cmの厚さで輪切りにし、切断面の師部(外側)と木部(中心部)の硬度を計測し、次いでその試料片を半分に切断し、表皮の硬度計測を行った。貫入深度1mm及び2mmにおける生ニンジンの硬度は部位別には木部が最も軟らかかった。表皮と師部のテクスチャーの差異は1mm貫入硬度で識別可能であった。生の状態では殆どの部位が3MPa以上の硬度を示したが、60分間加熱調理後では0.1〜0.4MPaと著しく低下した。また加熱後は木部が最も軟らかく、師部は1mm及び2mmの硬度の比率が他の部位よりも大きいのが特徴として捉えられた。室温並びに低温で1週間保存後の生ニンジンの硬度変化は両温度とも木部よりも表皮及び師部の方が大きく、外側のテクスチャーが変化しやすいことを明らかにした。またその傾向は室温保存で顕著に現れており、これは室温では重量変化が大きく、それに伴う水分損失が原因の一つとして考えられた。以上より、微小2バイト貫入試験は多面的評価を簡便に実施可能であり、広範囲に追跡する手段として有効であることを明らかにした。
|