研究課題
本年度はまず、ごれまでに収集しているデータを再分析することを通して、算数を数学に接続する学習過程を構想する上での理論的枠組みづくりを行った。その作業として、記号論的連鎖の過程と、授業展開が生徒の認知・情意に与える影響の2点に注目した。前者に関しては、中学校1年の図形の作図の授業データを、N.Presmegの提唱する記号論的連鎖の枠組みを用いて分析して、算数を数学に接続する学習段階を抽出するとともに、各段階を上昇する要因を隠喩、換喩という2つの比喩の点から説明した。後者に関しては、中学校1年の正負の数の乗法・除法の単元の教授実験を、G.Brousseauの提唱する教授学的状況論の視点から分析を行い、教授学的状況論に沿った授業過程では、問答法による授業と比べて、生徒が知識や考え方を身につけるだけでなく、知識形成に感動や、いつ・どのように・なぜ知識が働くかといったメタレベルの要素を獲得しうることが分かった。以上の分析から、子どもの認知的・記号論的過程を考慮しつつ、単元を全体的・連続的に展開しうる授業過程を構想する為の仮説的な枠組みを設定できたと考える。次に、小学校高学年の教材で、算数から数学への移行を促しうる教材として、小数の除法をとりあげ、これまでに収集している授業データを、主に子ども達の認知的変容の点から分析した。結果として、小数の除法の学習過程が算数から数学への移行に大きくかかわっていることを見いだすことができた。特に、小数の除法が乗法の視点から2種類の思考において捉え直される時に、真の理解がもたらされ、中学校数学への接続がはかられうるという知見を得た。
すべて 2004 その他
すべて 雑誌論文 (3件)
日本数学教育学会,第37回数学教育論文発表会論文集
ページ: 241-246
日本科学教育学会,第28回年会論文集
ページ: 127-130
Educational Studies in Mathematics (in press)