本研究では、計算問題等の習得が十分でない学習者に対して、コンピュータを用いて適切な支援を与えるシステムをWeb上で構築した。 適切な学習支援のためには、学習者の習得状態を同定することがまず重要な問題である。その学習者同定のために、確率ネットワーク(ベイジアンネットワーク)推論を取り入れ、学習者の回答により学習者の知識状態を習得・未修得といった2値ではなく、何%程度、といった確率値で示すようにした。 また、学習者への負担を少なくするためのテスト項目数削減のため、適応型テストのアルゴリズムを新たに提案した。従来の項目応答理論による適応型テストは1問1問が局所独立であるという仮定をおいているが、本研究においては、各問題間の関係をネットワーク構造で表すことにより、現実場面で用いられる大問・小問といったテスト形式を取り入れることが可能になった。 バグルールは直接観測されるものではなく、その存在は潜在変数として表すことが可能である。潜在変数を介した推論方法として、新たに因子と因子の間における回帰方法を提案した。さらに、ニューラルネットワークモデルにより非線形な関係にも拡張した。この因子間における回帰により、異なる対象間の心的イメージのつながりについてのアルゴリズム開発と、その応用としての心的イメージの表現方法を提案した。 これらのアルゴリズムをもとに、実際のCBTシステムを構築し、中学校数学の方程式までの範囲を題材とし、公立中学生91名に対し、調査実験を行った。その結果本システムは、誤りを持つ学習者について、効率よくその誤り同定をし、修正支援を行うことが可能であることが実証された。
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