研究概要 |
情報通信技術の発達によって遠隔学習環境が実現されている。しかし,現状の遠隔学習の形態は,質疑・応答による双方向のコミュニケーションが成立してはいるものの,基本的には知識伝達を目的とした講義形式のものである。学校に基盤を置いた教師教育を考えると,教師相互が協働して課題解決することを目的とした実習形式での学習が行えることが重要である。新しい教育の考え方を一人の教師のみが実現するのではなく,相互に協力し共有していかなければならない。教育の考え方を共有するには,特に新規に授業を開発していくような場面においては,的確な言語,図式,表,命題などを用いてわれわれの知識を効率よく表現し伝達できるコミュニケーション用具が必要になる。そこで本研究では,教師が知識共有のためのツールを用い協働で授業研究を行う実習が組み込まれた遠隔研修を可能とするシステムの構築を考えるに至った。 本研究の目的は,現職教員を対象とした遠隔研修システムの構築と将来に向けた実用性の検証にある。実用性の検証は実証的に行い,遠隔研修システムを実運用し,現職教員が協働で授業研究(カリキュラム開発や授業評価規準の策定)を進め課題を解決していく場面を実習の中に組み込んだ研修プログラムを実施する。 協働による課題解決を組み込んだ現職教員向けの研修として,具体的には「情報教育のカリキュラム開発と評価基準の作成」を設定した。この研修プログラムは対面での協働による問題解決を行うよう既に開発されたものである。この研修プログラムを,遠隔研修システムの構築と遠隔研修システムの実用性検証の実験とを並列して行い,遠隔での協働による問題解決が可能な形に発展させた。 特に本年度は,遠隔研修システムの構築として,主に授業知識記述ツールの開発を行った。授業評価知識を記述する授業評価規準記述ツールを新たに開発するとともに,既存の(1)授業設計支援システム,(2)授業事例ベースシステム,(3)授業映像検索システムのプログラムの移植作業を行った。
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