本研究は、モバイル機器の中でも通信機能の使用可能なパームサイズのPDA (Personal Digital Assistants)をはじめ、携帯電話・PHS等を活用した魅力ある学習環境インタフェースの検討を行う。とりわけ、モバイル通信機器特有の限られた情報提示スペースをいかにデザインするか、ヒューマンインタフェースの観点より、学習支援ツールとしてのモバイル機器ヒューマンインタフェース改善の基礎的な研究として位置づけ、実験、調査を通して検討していくこととする。本年度は、モバイル機器の表示、特に文字サイズに着目し、Webページで表示される文字サイズおよび行間の違いによって、学習者の好みや見やすさにどのような影響を及ぼすか検討することとした。 Webページ上に、携帯電話ディスプレイ、PDAディスプレイ、パソコンモニタのサイズに合わせたテキストエリアを確保した。そして、5種類の文字サイズ(文字サイズ要因)と3種類の行間(行間要因)を組み合わせた文章をそれぞれのテキストエリアに表示し、被験者に見やすさと好みについて評価させた。テキストエリアサイズ別に文字サイズ要因と行間要因による2要因分散分析を行ったところ、見やすさ、好みいずれについても交互作用が有意であった(p<.05)。これは、見やすさ、好みに対して、一定の規則性を見出せない傾向を意味し、個々の評定平均値に基づいたグラフからも、その評定にある種の規則性は見出すことはできなかった。 続いて、見やすさと好みの評価の個人差に着目し評定全体の相関係数を求めたところ、Bartlettの検定では相関の有意性が認められた(p<.01)が、数値的には低かった。さらに、テキストエリアサイズ別に相関係数を求めたところ、見やすさと好みの間に個人内でズレがあることが示された。
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