研究概要 |
本研究は,モバイル機器を活用したe-learningコンテンツの学習効果を高めるためのインタフェースの検討を行うことを目的としている。限られた情報呈示スペースのモバイル機器においては,いかに効率的により良くコンテンツを呈示すべきかが非常に重要である。そこで,本年度は呈示されるコンテンツが文字ベースの文章である場合におけるスクロールに着目し,スクロールの違いが学習者の好みや読みやすさにどのような影響を及ぼすかについて検討することとした。特にスクロールの幅や速さに着自し,どのような条件において読みやすいインタフェースとなりうるかを実験的に検討した。 パソコンのブラウザ上に,一般的なPDAサイズ枠に合わせてテキストエリアを確保し,文章を表示させ,3種類のスクロール幅要因(1行送り,半ページ送り,全ページ送りの3条件)と3種類の自動スクロール速度要因(遅い,速い,所定位置へのジャンプの3条件)の組み合わせで9種類の評定を行わせた。スクロールタイプ,好み,読みやすさ,幅,速さ,見やすさ,親しみやすさの7項目について回答を求めた。2要因の分散分析を行った結果,スクロールタイプ,好み,読みやすさ,見やすさ,親しみやすさの5項目において,共通する傾向が示された。いずれも交互作用が有意であり,多重比較を行ったところ,半ページ送りにおいて,遅いスクロールの方が所定位置へのジャンプよりも有意に好ましいスクロール速度であることが示された(p<.05)。一方,所定位置へのジャンプにおいて,半ページ送りよりも1行送りの方が有意に好ましいスクロール幅であるという評価が得られた(p<.05)。さらに,速いスクロールにおいて,1行送りの方が,半ページや全ページ送りよりも有意に好ましいスクロール幅であることが示された(p<.05)。
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