研究概要 |
教師は,教科内容,教授方法,学習者に関する知識が統合された複合的な知識をもつことが求められる.研究代表者らは,CSCL環境で社会的相互作用しながらポートフォリオを作成することが,授業に関する複合的な知識を形成させるために大きな力を発揮するのではないかと考え,実践研究を進めてきている. 平成16年度は,教育実習前の大学3年生が,CSCL環境を通して,(a)同じ3年生同士,(b)教育実践経験の多い大学院生,(c)教科内容の専門家である大学教員,と相互作用を行うことで,学習指導案を作成・改善する過程をポートフォリオ化する授業を行った.学習過程と成果,事後調査の分析から,3年生の学習指導案等は改善され,学習指導案を分析的に読む力がついたことが確認された.3年生同士と大学院生,教科内容専門の大学教員の発言にはそれぞれ異なる特徴と影響が認められた.このことからCSCL環境下での多様な社会的相互交流は,授業に関する複合的な知識を形成させるために大きな力を発揮することが示唆された. また,教育実習を経験した大学4年生が,CSCL環境を通して,教育実習の様子を動画ファイルとして扱うデジタル・ティーチング・ポートフォリオを作成する授業の試行を行った.実践の結果,大学生は教育実習経験を反省し,次の課題を把握するなどの学習効果が認められた.CSCL環境による仲間同士の相互作用が相互作用を促進したと考えられる.また,実習授業のビデオクリップは授業の様子を伝えあうのに有効であったが,反省や課題把握には十分に用いられているとはいえなかった.また情報技術が向上した学生がいる一方,スキル不足から作成に困難を感じる学生もいたことがわかった.
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