本研究の目的はCaroll(1995)による「(人々の)経験をデザインする手法:Scenario-Based Design」を援用し、教育「実践をデザインする」プロセスを記述する方法論を開発することにある。その最大の特徴は、実践者と研究者、それぞれの視点から同時的に「実践」を分析・評価し、更なる次の実践のデザインにつなげることにある。従来の研究手法のように分析に多大な時間がかかり、実践が終わってしまった1年後にしか結果がわかならいというようなことは避け、データ収集後にすぐに提示できるシステムをつくることを目標としていた。 今年度、観察記録簡易編集ツールの開発を調査し検討した結果、大量の観察記録データを収集後に編集するのは、簡易であっても分析者側の負荷が大きく、実践者に提示するまでの時間がかかることが明らかになったため、観察記録画像を収集すると同時にその場でコメントをつけること(手書き・音声入力)が可能な簡易観察記録ツールへの検討を開始した。観察記録自体を簡易にできるツールを開発したほうがフィールドワークの本来の方法論には適しており、フィールドノーツのような手軽さがある。 また、現在開発中のツールは、記録(実践)の流れを順次その場で一覧表示(ビューイング)できることも特徴である。一覧表示が瞬時にできることで、シナリオとして実践でおきた経験の流れをリフレクションしやすくなる。開発中のツールは参加・共有型デザインツールとして、保育現場だけではなく、さまざまな場面で利用できる。現在、調査による観察ツールの要求事項抽出、提案が終了し、製作段階にある。
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