研究概要 |
平成18年度においては,サーモ情報を用いたマルチメディアコンテンツ評価に関する研究,および,視線情報を用いたマルチメディアコンテンツ作成に関する研究を実施した.人間の心理的な情報は外部から直接観測することができないが,外界から情報を受容することに伴って生じる生体反応は観測が可能であるものが多い.本研究では,サーモカメラ,および,視線計測装置を利用してマルチメディアコンテンツに対する人の反応を測定し,この測定結果をコンテンツ作成にフィードバックできるシステムを構築した. 1.非接触型であるサーモカメラ(アビオニクス製サーモカメラ)を用いた情動検出システムを構築した.鼻部には上動脈吻合血管が皮膚直下に多数存在するため,情動ストレスに起因する血流量の変化が皮膚温度に顕著に現れることが知られている.予備実験として情動を鼻部温度から検出できるか確認するために,被験者に聴覚刺激によって動揺を与え,その時の鼻部温度を測定した.この実験の結果,動揺を与えた直後に温度低下が確認されたことから,これを利用した顔面皮膚温の変化による情動検出システムを構築した.特に,本システムでは,画像認識により鼻部部分をリアルタイムに追跡し,計測中に被験者が動いても温度を測定できるように実装したことが特徴となっている. また,顔面皮膚温度から情動を検出してユーザの嗜好を検出し,その人の好みのアイテムを推薦するシステムを試作した.成果を学会にて報告した. 2.眼球運動を利用した映像編集システムを構築した.本システムは,固定ハイビジョンカメラで撮影した映像を,眼球測定器(Nac製 視線計測装置)を装着した状態で視聴するだけで,あたかもカメラマンが撮影したようなカメラワークの加わった映像へと自動的に編集するシステムである.撮影は固定カメラを用いるため,カメラワークなどの撮影作業にとらわれることがない.撮影した映像はハイビジョン映像サイズで保存されるが,その映像の中から注視領域を切り出すことにより,カメラワークの加わった映像を作成している.切り出した領域を移動させることで,パン・チルト,拡大率を変化させることでズーミングの効果を仮想的に作り出した.視線の動きはつねに小刻み震えているため,5フレーム分の平均値をとり,その値を適用することで震えを低減させた.また,一定時間,視線が同じ場所に停滞している場合には,ズームを行うことにした.成果を学会にて報告した.
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