ネットワークを介した手話コミュニケーションの可能性と問題点を探るため、以下のような研究を行なった。 1.ビデオ会議システムおよびビデオチャットによる手話コミュニケーションの予備実験 筑波技術短期大学(茨城県つくば市)と松本聾学校(長野県松本市)をビデオ会議システムで接続し、手話による学生間の交流を行なった。352ピクセル×288ライン、30フレーム/秒の映像を、送受信それぞれ1Mbpsの設定で通信を行なったところ、手話による会話が十分に成立することを確認した。しかし、発言者が交代する毎にカメラを話者に向ける必要があり、その度に会話が途切れてしまうという問題も明らかになった。また、プレゼンテーション資料を見せながら手話で説明するなどの状況では、1対の映像のみでは対応が困難であることなども確認された。 また、同時にWebベースでのビデオチャットシステムについても実験を行なった。160ピクセル×120ライン、10フレーム/秒程度の映像でも、多少の困難さはあるが相互のやり取りを通してコミュニケーションが成立することを確認した。 2.遠隔地手話コミュニケーション実験システムの作成 予備実験の結果を受けて、ネットワーク画像通信による様々な問題をシミュレートできるシステムを作成した。これにより、画質劣化、時間遅延、コマ落ちなどを擬似的に実現することが可能である。さらに、複数のカメラ映像を入力ソースとして合成することが可能である。このシステムを用いることにより、低コストでかつ効果的な手話画像通信の方法を提案することが可能になる。
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