3ヵ年の継続研究の二年目として「フランスにおける関連先行研究の調査及びアーカーブ資料調査」及び「モロッコ・カサブランカ市を中心としたフランスの建設産業、技術の発展・伝播に関する資料調査」を行った。 「フランスにおける関連先行研究の調査及びアーカーブ資料調査」として、9月と11月にフランス国立アーカイブ産業資料館、フランス建築協会アーカイブを訪問し、エッフェル社やフィーブ・リール社などのフランスの鉄・鋼構造建築の生産者10社に関する一次資料調査を行った。この調査をもとにフランスの19世紀から20世紀にかけての代表的なファブリケーターをその実現建築作品と共に捉え、ファブリケーターに技術の蓄積が行われているのではないかという仮説に重み付けを行った。また、昨年度以来行っている「ジャン・プルーヴェ社」に関する史的解明研究の国際チームの成果を英語版として出版することもできた。これらにより20世紀フランス建設工業化の流れの中で、シュワルツ・オモン・アトリエをより具体的に相対化して捉え、その特異性を明らかにすることができた。 「モロッコ・カサブランカ市を中心としたフランスの建設産業、技術の発展・伝播に関する資料調査」として9月及び10月にカサブランカ市建築・都市計画局資料室、フランス商工会議所資料室、モロッコ国立アーカイブを訪問、調査を行った。目本においてはこの分野において全くの未知の研究地域であり、フランスほどのアーカイブ資料整理体制が整っていないため、調査は難航したが、ラバト工料大学、ラバト建築大学、文化財局などの研究者と、関連研究の意見交換を行う機会等に恵まれ、今後の研究体制をつくりあげることができるようになった。また、国際組織ドコモモのモロッコ支部とも連携を取れるようになった。調査は初期段階に留まったが、来年度以降の研究体制の礎を築くことができた。
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