研究初年度は、年輪試料収集の前提となる東北各地の埋蔵文化財センターなどとの協力関係構築、研究試料の収集、および購入した計測機器の整備、運用体制の確立を重点的に行った。 まず、現生材では、秋田県藤里町の国有林3地点からスギの円盤試料56点を収集し、年輪幅の計測を行った。基礎的な解析として、これらの試料の年輪幅変動における個体内、個体間、地点間での同調性の有無を検討した。その結果、いずれにおいても高い同調性があることが確認され、これらのデータを元に、この地域におけるスギの279年分(1725-2003年)の暦年標準パターンを構築した。ヒバにおいても、下北、津軽半島から円盤試料をさらに100個体収集し、現在までに、年輪内密度、年輪幅を測定するための試料作製および軟X線フィルムの撮影を終え、計測に入れる段階にある。 一方、出土木材でもスギの試料収集を進めた。これまでに、秋田県の東根小屋町遺跡、須崎遺跡、払田柵遺跡、胡桃館遺跡、山形県の米沢城跡、鶴ヶ岡城跡遺跡などから100点以上の試料を借用した。これらのうち、16-18世紀にあたる東根小屋町遺跡などの試料35点あまりの年輪幅を計測したが、現在までの所、試料間あるいは現生クロノロジーとの照合はほとんどできていない。このため、さらに同時代の試料を収集する必要がある。また、ヒバにおいても、青森県の十三湊遺跡などの試料81点をすでに借用している。これとは別に、スギ、ヒバとの対照試料として、サワラ、ヒノキなどの試料も収集しており、これまでにおよそ180点を借用している。今後、これらも含め、計測を進める予定である。
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