研究目的を達成すための研究計画・方法について 本研究は、陶磁器の表面に形成されている釉薬の光学的物性と風化状態に着目し、保存修復処理に関する基礎的研究に役立てることを目的としている。釉薬の光学的物性は、釉薬や胎土の境界面などによる様々な光の挙動の相乗的作用によって決まり、陶磁器表面の光の反射・散乱・吸収の現象を風化状態の違いと関連付けてとらえることができると考える。この因子として光学的物性(屈折率、分光反射率、光沢度など)に焦点を絞り込み、研究初年度である本年度は、国内外の出土陶磁器を対象とした釉薬の光学的物性に関する基礎データの蓄積をおこなった。 遺物表面の質感に大きく影響を及ぼす光沢度の測定は大変重要である。しかし出土遺物の形状や表面状態は一定ではないなど、文化財資料には制約があるため、既存装置を利用し文化財に対応させる必要がある。従って文化財資料に対応させ、精度・再現性を高めるための基礎的実験を重点的におこなっている。 国内外の出土陶磁器を対象とした陶磁器表面の光の反射、散乱、吸収という現象を風化状態と関連付けるために、光沢度のほかに屈折率や分光反射率などの測定を行い、光学的な物性を客観的に把握するためのデータ蓄積をおこなっている。これらのデータから、陶磁器表面の光の挙動と風化状態の関連性について調査し、今後の保存修復処理に際して、用いる樹脂の光学的物性と保存修復処理に関する基礎的な情報を集積し、樹脂選定や屈折率のコントロールなど、遺物状態に対応した体系的な指針を提示していく。
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