研究課題
陸域植生活動や土地被覆の変化が、大気境界層構造や雲量にどのような影響を与えているのかについて考察した。特に、近年の人為活動によって土地被覆の変化が激しい東ユーラシアに焦点を当て、データ解析を行った。本研究で用いたデータは、NOAA/AVHRRから得られたPathfinder(PAL)データと、ISCCP(International Satellite Cloud Climatology Project)による雲量データである。本研究では、大気境界層構造の変化を示すものとして、雲量に焦点を絞った。PALデータからは、正規化植生指標(Normalized Difference Vegetation Index : NDVI)を計算し、その経年変動について調べた。またISCCP雲量データからは、全雲量と低層雲量(特に積雲雲量)の経年変動を調べた。雲量は地形性の局地循環によって日中の山岳域で発生しやすいため、本研究では地形の影響を受けない比較的平坦な地域を選定し、植生毎にNDVIと雲量の経年変動を明らかにした。その結果、積雲雲量は乾燥・半乾燥地域において減少傾向にあり、非乾燥地域においては増加傾向にあった。この原因を明らかにするために、地上での気温や相対湿度等の気象要素との関係を調べた。その結果、乾燥・半乾燥地域においては元来積雲が卓越していた一方で、気温上昇による相対湿度の低下によって積雲の生成さえも抑制されたことが原因として考えられた。また非乾燥地域においては、元来低層雲に占める積雲の割合が小さかった一方で、相対湿度の低下によって積雲の低層雲に占める割合が増加したことが主な原因として考えられた。一方、メソスケールでの土地被覆や地表面状態の変化がどのように大気境界層構造に影響を及ぼすのかについて、航空機を用いた大気境界層内の乱流変動に関する観測データを解析した。解析に用いたデータは、研究代表者が2000年4月〜6月にかけて東シベリアにおいて行った航空機観測から得られたデータである。先ず、航空機に搭載したビデオイメージから土地被覆を判別した。その後、航空機搭載型の乱流変動センサーにより得られたデータから、大気境界層内の運動量・顕熱・潜熱の各フラックスを計算した。その結果、主に草原に覆われたレナ河低地とその両岸に卓越するカラマツ林との粗度的・熱的コントラストにより、カラマツ林上の大気境界層内の乱流フラックスは大きくなった。この乱流フラックスのコントラストによって、大気が不安定な場合には、レナ河近傍において熱的内部境界層が発達していた。
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