研究概要 |
申請書記載内容に基づき,溶存イオン濃度の分析のためイオンクロマトグラフィーを購入した。また,イオンクロマトグラフィーを用いて,低溶存イオン濃度である南極内陸部の雪氷を分析できる環境を構築した。構築した環境は,蒸留水・超純水製造装置,クラス10000のクリーンブース,コンタミネーションを防ぐためのテフロン製ボトルなどである。本経費ではイオンクロマトグラフィーの購入代金ですでに満額となったため,環境整備費用として弓削商船高等専門学校の校長裁量経費から賄った。環境の構築には初年度(平成16年度)ほぼすべての期間を必要とした。次年度もさらに環境整備を推進する。 亜氷期・亜間氷期・間氷期の南極ドームふじ氷床コア3本(それぞれ長さ約500mm)の溶存イオン濃度をイオンクロマトグラフィーにより季節変動が検出できる時間分解能で分析した。1年間で分析した試料数は陽イオン900サンプル,陰イオン1000サンプルである。3本の氷コアが季節変動を保持しているか否かは現在解析中であるが,溶存イオン成分は南極に積雪として水分子が堆積した後に,昇華・揮発・拡散・結晶粒界水脈などの物理プロセスによる再配分を引き起こしていることが確認された。これらの物理プロセスを評価するために,深さ100mまでのやや浅いフィルンコアの高時間分解能解析を行う必要がある。次年度は陽・陰イオンそれぞれ約2500サンプルの分析を目標とし,フィルンコアの高時間分解能解析に着手し,南極ドームふじ地域における季節変動に対するイオン再配分の影響について追及する。
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