本年度は、地方環境税を題材とした便益移転を行うためのデータ収集及び移転手法の開発を行うことを目的として研究を実施した。 森林保全を対象とした地方環境税について、2003年に導入された高知県、2004年に導入された岡山県、そして2005年に導入される鳥取県の3県を対象として、表明選好法(CVM及びコンジョイント分析)によるWTP評価のためのアンケート調査を2004年12月に実施した。標本は高知県(高知市・大豊町)、岡山県(岡山市・加茂町)、鳥取県(鳥取市・智頭町)の選挙人名簿から各200人を無作為抽出し、各16人に対して予備調査を実施した後、残りの各184人(計1104人)にアンケート票を発送した。回収率は45%であった。 CVMによる分析結果においては、3県の中で最も早く森林環境税を導入した高知県においてWTPが最も高く、また環境税に対する認識度合いも高いことが明らかとなった。CVMによって得られたWTPをもとに便益移転を実施した結果、同一県内の市町村においては便益移転が可能であるが、異なる県同士の組み合わせにおいては便益移転が不可能となるケースのあることが明らかとなった。 CVMだけではなくコンジョイント分析を用いた便益移転についても同様の結果が得られた。ここでのCVM及びコンジョイント分析の便益移転可能性の検証には、信頼区間のオーバーラップに基づく手法を使用した。しかしながら、さらに精度の高い便益移転手法の開発を目的として、コンボリューション手法等の改良を実施し、オーバーラップ手法との比較を実施している。ランダム・パラメータ・ロジットモデルや潜在クラス分析等のモデル改良を実施し、便益移転可能性について比較分析を行っている。また、アンケート調査において私的財への防御支出に関する情報を得ていることから、回避支出法によるWTP評価結果についても便益移転可能性を検証することを目的としてモデルを改良している。
|