本年度実施した研究の概要は、以下の3点に集約できる。第1に、表明選好法であるコンジョイント分析及びCVMについて、便益移転手法確立のための手法上の改良を行った。第2に、回避支出法とコンジョイント分析を同時に実施し、収束的妥当性について詳細な検証を行った。第3に、地方環境税の便益評価にコンジョイント分析を実施する際に重要な点である属性と水準の伝達方法について検証した。 1.森林環境税を対象として、便益移転手法の確立に向けての実証分析を行った。従来は、WTPについて非重複基準による検定を行うことが一般的であったが、精度の高いコンボリューションを用いて便益移転可能性の検証を行った。さらに、スケール・パラメータ比を考慮した尤度比検定を用いることにより同等性の検証を行い、便益移転可能性を検証した。水質改善を対象としてコンジョイント分析と回避支出法を適用し、収束的妥当性の検証を行った。コンジョイント分析と比較すると、回避支出法はモデルの当てはまりが良好であるが、係数推定値の安定性が低く、モデル構築時の柔軟性が低い。コンボリューションを用いると、残留塩素についての限界支払い意志額の同等性が棄却されたが、非重複基準を用いた場合には棄却されないことが明らかとなった。 3.環境税を用いた公園緑地整備について、横浜市民を対象としてグラフィカル情報とテキスト情報を組み合わせてコンジョイント分析を行った。その結果、公園緑地については、利用者の社会経済変数によってグルーピングすることにより、グループごとに特徴的なパラメータ値が得られることが、潜在クラス分析によって明らかとなった。また、森林保全による花粉症対策について、患者数削減パターンと飛散量削減パターンの差違を検証した結果、直接的な飛散量削減対策に対する評価が高いことが明らかとなった。
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