本年度は、琵琶湖から淀川河口域に至る淀川水系全体の12ヶ所から採取したサンプルについて、窒素循環微生物や微生物群集構造の解析を昨年度に引き続いて行い、データの蓄積を図った。 昨年度までに得られていた傾向として、湖内やダムなどの水が滞留する場での物質循環機能(窒素代謝能)の低下が挙げられるが、これは本年度のデータでも同様となった。さらに、下水処理場の放流口の直近下流のサンプリングポイントでは、概してアンモニア酸化細菌数が増加する傾向が認められ、下水処理場が、アンモニア酸化細菌の植種源となっている可能性が示唆された。また、淀川とは環境の異なる河川として、武庫川(兵庫県)、大和川(大阪府)、北川(福井県)から同様にサンプリングを行い、河川ごとに窒素循環微生物、芳香族化合物分解微生物、微生物群集構造解析、化学物質分解ポテンシャル(フェノール、アニリン)の比較を行うことで、本研究で評価対象とした項目が河川の「健全性」を評価するための指標としての妥当性を検討した。その結果、汚染の度合い河川、地点では、窒素循環機能を担う微生物群の数は概して少なく、化学物質分解ポテンシャルも低いものとなったが、人為的活動の影響をより強く受けている淀川、武庫川の特に下流域では窒素循環機能を担う微生物群の数が多くなり、また化学物質分解ポテンシャルも高いものとなった。これらの結果から、窒素循環微生物群や化学物質分解ポテンシャルが、河川の人為汚染の度合いを評価する指標になり得ることが示された。
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