調査を行った14箇所の溜め池には21分類群の動物プランクトンが生息し、出現分類群数と生息密度は水域によって異なり、部分的ではあるが、生息魚類の影響を強く受けていた。ブルーギルのみが生息する3水域からは、鰓脚類の中でも大型のシダ科、ミジンコ科、ホロミジンコ科が検出されなかった。プランクトン食の魚は、より大きく目立つ分類群(個体)を選択的に捕食する傾向があり、また、餌の密度が高いと大型の餌かち捕食する傾向が強いことが報告されている。したがって、ブルーギルが大型の鰓脚類から選択して捕食していった結果、シダ科、ミジンコ科、ホロミジンコ科の生息密度が検出されないまでに低くなったことが考えられる。反対に、大型の鰓脚類と植物プランクトンをめぐる競争関係にあった、鰓脚類の中で最も小型のゾウミジンコ科が増加したものと推測される。 さらに、ブルーギルが最も高密度で生息していた畑田中池ではシダ科が出現していたものの、それらの体サイズは他のいずれの水域に比べても調査期間全体にわたり小さかった。また、オオクチバスとブルーギルが同所的に生息する水域では、ブルーギルのみの水域に比べてミジンコ科を含む複数の分類群が出現した。さらに、これら両種が生息する水域では、ブルーギルのみが生息する水域と異なり大型の鰓脚類のうちシダ科のみが検出されなかった。 ブルーギル、オオクチバス両種ともに生息しない水域では、ホロミジンコ科以外の鰓脚類がすべて検出され、しかも両種ともに生息する水域に比べて全体的に生息密度が高かった。これらの水域には、外来種両種のみならず、真名峠堤を除き在来魚類も生息していなかったことから、動物プランクトン群集に対する捕食圧がきわめて限られていたことを反映しているものと考えられる。
|