研究概要 |
平成15年に得られた研究成果(課題番号14780430)であった強毒性ニトロ多環芳香族炭化水素類(ニトロPAHs)の分析法を採用し、廃棄物焼却施設から排出される排ガス中に含まれるニトロPAHs(特に毒性の強いジニトロピレン)について発生実態の調査を行った。廃棄物焼却施設の燃焼物は主に一般固形廃棄物、産業廃棄物(建築廃材、木材、繊維、プラスチック類など)、下水汚泥を扱い、燃焼温度やガスの組成など燃焼管理も行われている28箇所の施設からの排ガスを採取した。これまで検出不可能であったジニトロピレンは、検出下限値が0.9〜1.1ピコグラムと極めて微量分析法を確立したことから検出が可能となった。28箇所すべての廃棄物焼却施設からジニトロピレンが検出され、その濃度は3.9〜520 pg/m^3と施設間でかなり相違する結果となった。ジニトロピレンは3つの異性体が同定可能であり、ニトロ基の置換位置によりそれぞれ1,3-,1,6-及び1,8-ジニトロピレンと表されている。これら異性体の組成比はほぼ同比率であるが、1,6-ジニトロピレンが高くなる施設が存在した。これらの結果は、燃焼条件や燃焼物の相違に起因することが示唆され、さらに継続した調査を行っている。 一方、ジニトロピレン以外のニトロ多環芳香族炭化水素の分析も並行して調査し、ナフタレン、ベンゾ(a)ピレン、ビフェニル、アントラセン等のPAHsにニトロ基が1つあるいは2つ置換した化合物の定量を行った。前述したジニトロピレンと比較し、高濃度に検出された化合物の一例として、モノニトロ及びジニトロナフタレン、ニトロアントラセン及びニトロフェナンスレンが存在することを明らかにした。これら化合物の中には変異原性を有することから、今後、ハロゲン化多環芳香族炭化水素と併せて汚染実態を究明することが急務であると考察した。
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