研究概要 |
農村下水道処理水を折返し水路とした7区画(第4区画はクレソン区,第5区画は魚区,他は雑草区)よりなる休耕田(830m^2)に導入し,生態系を活用した排水浄化処理技術の開発を検討してきた調査地のニゴロブナを対象とした。この調査地では2001年9月より排水の流入を開始し,2003年4月より流下過程におけるエストロゲン活性の動態およびニゴロブナへの影響を調査して,2004年9月15日まで継続した。終了後,ニゴロブナをFRP水槽へ移し,エストロゲン作用影響の残存性を定期調査して現在も継続中である。また,対照魚調査として2種の調査を実施した。1つは,滋賀県内の事業所等(南浜姉川人工河川,朝日漁業協同組合による琵琶湖湖上網生簀,(財)滋賀県水産振興協会琵琶湖栽培漁業センター高島事業所の3ヶ所)で飼育されたニゴロブナ種苗の放流時取り上げ調査である。本年度は10月7日,19日,11月4日に実施した。もう1つは,琵琶湖の天然ニゴロブナの捕獲調査で約1ヶ月に1回の頻度で行った。定置網による定点調査と,沖曳網漁による漁期の生息域調査を実施した。またニゴロブナ生息域の水質調査として,琵琶湖北湖および南湖流出水をそれぞれ2週間に1回調査した。水試料の分析は,多様なエストロゲン様物質の総量を評価するため酵母Two-Hybrid法(エストロゲン受容体の違いによりヒトおよびメダカ,2種の酵母株を使用)によるバイオアッセイ手法を採用した。ヒト受容体は内因性,メダカ受容体は外因性のエストロゲンに対して高感度である。魚体は,尾へい部採血,全長(体長),体重,生殖腺体指数(GSI)等を測定し,鱗および耳石を採取して年齢判定の材料とした。また血清ビテロジェニン(Vg)濃度の測定にはその特異抗体が必要となるが,本年度は抗ニゴロブナVg抗体を作製した。今後,測定の条件設定を行い,系を確立する予定である。
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