研究課題
本研究は、炭素質物質(石炭・バイオマス・コークス)の熱変換工程(熱分解・燃焼・ガス化)で発生する塩化水素(HCl)と未燃炭素(炭化水素や金属などから成る凝集・凝縮粒子「スス」あるいは「炭素質残査」)の低温再合成(de novo合成)反応による有機塩素化合物の生成機構ならびに排出制御原理を分子レベルで明らかにすることを目的としている。平成16年度は主に、熱分解(または熱処理)直後の炭素質物質とHClの反応、および生成する塩素種の形態解析に取り組み、以下の結論を得た。1.HClは、低炭化度炭あるいは活性炭を加熱して得た炭素質物質と350〜500℃で反応し、その量は炭素質物質の種類や比表面積、ならびに反応温度にはほとんど影響されなかった。2.HCl処理した炭素質物質中には、NaClやKClのみならず塩素化芳香族構造のCl 2p XPSスペクトルが出現し、HClは炭素と反応して有機塩化物に転換することが明らかとなった。また、実際の鉄鉱石焼結機や一般廃棄物の焼却時に排出されるダストならびにフライアッシュ(FA)中に含まれる未燃炭素と塩素を形態別に定量化した結果、3.ダストやEA中の塩素の大部分は有機塩化物として存在し、その割合は未燃炭素表面のカルボキシル基やラクトン/酸無水物の量が増加するとほぼ直線的に増大する傾向が認められた。以上より、HClは未燃炭素表面の含酸素官能基から酸素が脱離した後に生成するフリーな炭素(エッジ炭素)と反応して、有機塩素化合物に転換すると推論された。それ故、de novo合成によるダイオキシン類や有機塩素化合物の生成を抑制するためには、エッジ炭素の活性を抑制する物質の添加、例えば窒素や硫黄を導入する方法が有効であると考えられた。
すべて 2005 2004
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International Conference on Coal Science and Technology, Okinawa (発表予定)
第41回石炭科学会議発表論文集
ページ: 41-42
第4回多元物質科学研究所研究発表会講演予稿集
ページ: 89