土壌の汚染を汚染物質分解菌を添加して浄化するバイオオーギュメンテーションにおいて、添加する細菌の土壌への吸着を評価する手法を確立するため様々な細菌の土壌への吸着を調べて指標化すること、また土壌より特徴的な土壌吸着能を持つ菌を新規に分離することを目的として、初年度の研究を行った。 1.土壌カラム担体および吸着の解析方法の検討。細菌を吸着させる土壌カラムの担体として、石英砂を用いた。カラム実験に先立ち、バッチでの石英砂への細菌の吸着を調べた。NaCl、CaCl_2、硫安等の溶液に大腸菌を懸濁して石英砂に添加し一定時間振とう後、非吸着の細胞数をコロニー計数法で測定した。NaCl、硫安溶液などに懸濁した大腸菌の吸着はLangmuir式に従うと考えられたが、Caイオンを含む溶液ではB.E.T式などより複雑な吸着を行うことが示唆され、従来の研究のように人工地下水や無機塩培地など様々な塩を含む溶液を細胞の懸濁に用いると、土壌吸着能の指標化は困難であることが明らかとなった。NaCl、硫安溶液を用いて吸着解析の実験条件を検討した。また担体として疎水クロマトグラフィー担体を用いて同様の実験を行ったが、石英砂よりも吸着能が低く再現性も劣る結果が得られた。現在、他の細菌細胞の吸着解析を行っている。 2.特徴的な土壌吸着能を持つ菌の土壌からの分離。土壌細菌のほとんどは難培養であることから、土壌カラムに吸着した微生物を効率よく検出するために、土壌からの細菌DNA抽出法の検討、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)による解析法の検討を行った。ビーズ式細胞破砕機を用いて様々な条件で土壌より細菌DNAを抽出、16S rRNA遺伝子を増幅しDGGEで分離した結果、細胞破砕時にスキムミルクを添加することで土壌より効率よくDNAを回収し、PCR-GGEで多数の菌由来のDNAが観察できることがわかった。
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