地盤中での汚染物質の生物有効性は、微生物と汚染物質の接触頻度に支配され、汚染物質への微生物の微視的な到達度が分解の律速となると考えられており、微生物の地下地盤における微視的な分布過程や状況を把握し、実用スケールである巨視的分布との関係を理解することは非常に重要である。本研究では、地盤構造と流れに対する定着サイトの微視的実態を解明するため、浸透流による輸送過程を経て固相上に定着している微生物を直接観察可能とするための方法論の構築を目指した。本年度は、水相から固相に移行、定着している士壌微生物およびE.Coli K12株の化学的固定、染色、脱水、樹脂による包埋、固化体の切り出し、顕微鏡観察に供するための表面研磨と言う一連の蛍光顕微鏡観察可能なサンプル作製方法について検討すると共に、河川堆積砂を微生物源としてガラスビーズ充填カラムへの土壌微生物の定着量の評価を行った。得られた結果は以下の通りである。 ・微生物の固定は20mMカコジル酸緩衝液(pH7.2)に溶かした1%グルタルアルデヒド水溶液を用い、染色にはエチジウムブロミド、さらにアセトンを用い段階的に多孔質媒体を脱水、ポリエステル樹脂による包埋を行った結果、いくつかの微生物を固相上に固定し、直接観測可能な状態に出来た。 ・サンプルの観察断面を次々と更新しながら、蛍光顕微鏡による微生物の直接観測を可能とした。ただし、流れに対する微視的定着位置を特定し、サイトマップを作成する手法の構築までには至っていない。 ・微生物体の物理的な固定、すなわち固相表面上に定着している微生物体を水の掃流力に対して移動しないようにする手法が必要であるが、固定、染色、脱水および樹脂包埋の全ての過程で流体力による固相上微生物の巻き上げ発生が、土壌微生物による定着量評価と蛍光顕微鏡観察から推測された。したがって、サンプル作成時の撹乱による影響の大きさを評価する必要がある。
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