本研究は宍道湖をモデルケースとして、様々な岸辺のタイプごとに水域に対する影響を主に物質動態の側面から評価し、一般化した指標を提示することを目的とする。本年度は、宍道湖の湖岸の生態系を修復するプロセスを整理するためのデータを収集した。 ボートで一周しながら湖岸をビデオ撮影し、どのような景観が見られるか集計した。近年、環境修復事業として様々な改変が行われている宍道湖西岸に着目し、調査地点を設けた。水深1m以浅の地点において水温、塩分、溶存酸素濃度、波高等の環境要因を測定し、採水および表層2mmの堆積物の採取を行った。底生無脊椎動物を採集して種組成を調べ、いくつかの種については安定同位体比を測定した。その結果、地点によってヤマトシジミやカワゴカイの炭素安定同位体比の値に差が見られ、底生無脊椎動物の餌利用が異なることが示唆された。コンクリート護岸の建設や人為的な植生の改変を含む湖岸の改変は、湖の底生無脊椎動物の餌利用に影響する可能性が考えられることから、湖岸の生態系を修復するプロセスにはこれらの点を考慮する必要がある。 しかしながら、宍道湖西岸で調査を行った地点が4ヶ所と少なかったことと、岸辺の違いではない場所の差異による影響を含む可能性があるため、2004年12月に合計34地点を設定し、環境要因や生物群集の調査を行った。今後はこれらの地点間の比較により、岸辺の違いが浅い水域の生物に及ぼす影響を評価する予定である。
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