本研究では、残渣系バイオマスの高効率再資源化技術の実用化を志向した反応及び分離・精製技術の開発を行い、経済的かつ低環境負荷プロセスの構築を目的としている。初年度である本年は、反応技術、分離技術に関して以下のような成果を得た。 まず反応技術に関しては、バイオマスの主成分の一つであるセルロースやヘミセルロースの加水分解中間物質である単糖類(フルクトース、キシロース)を出発原料とした流通式反応装置の設計・試作、および当該装置を利用した高温高圧水中での分解反応実験を実施した。広範な操作条件下での実験および生成物分析から、温度、圧力および反応器内滞在時間の連続的な操作により原料物質に生起する複数の素反応速度および選択性を制御し、結果として生成物分布を操作しうることを見出した。また、温度220℃程度またはそれ以上、飽和蒸気圧以上の水熱条件下での電気化学反応(以後、水熱電解とする)実験装置の製作および実験も行い、バイオマス主成分のリグニンおよびバイオマスモデル物質の反応実験も試みた。その結果、単なる水熱条件下での分解反応では低分子化がほとんど進行しないのに対し、30分程度の水熱電解処理で効率良く水溶化し得ることを見出した。 一方、分離技術に関しては、CCA防腐処理木材表面に含浸している重金属類の亜臨界抽出除去に関する検討を行なった。実験には半回分式装置を用いて、広範な温度、圧力および通水時間条件において重金属類(銅、クロム、ヒ素)の抽出挙動を追跡した。その結果、抽出温度を操作することによりそれらの抽出率を効率良く抽出除去し得ることがわかった。今後、重金属類の高温高圧水中での存在形態や溶解度、抽出メカニズムを解明し、より効率的な抽出除去システムの構築を目指す。
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