本研究では、残渣系バイオマスの高効率再資源化技術の実用化を志向した反応及び分離・精製技術の開発を行い、経済的かつ低環境負荷プロセスの構築を目的とした。特に、バイオマスの変換において、臨界点近傍で特異な相挙動及び諸物性を有する高温高圧流体を反応場または分離場として有効に利用する技術について検討を進めた。具体的には、反応場の段階的な温度・圧力制御によりバイオマスモデル物質(オリゴ糖、単糖、リグニン様化合物など)の分解処理において得られる生成物組成の制御性、生成物の水中への溶解度を温度、圧力操作により制御する析出分離などの技術について調査した。さらに、生成物水溶液中に存在するアルデヒド類、有機酸類、フラン類といった副生成物の分離除去法として抽出や蒸留といった分離法を検討したが、効率の良い当該成分除去は出来なかった。吸着法に関しては、有機酸を選択的に吸着する可能性の高い吸着剤を選定し、亜臨界・超臨界水処理後の生成物水溶液からの有機酸の吸着除去を計画していた。しかしながら、結果として、吸着剤の調製に多くの時間を要したため試験の実施には至らなかった。 また、視点を変え、セルロース系バイオマスの水熱変換過程において生成する糖類、糖アルデヒド、カルボン酸及び芳香族化合物を副産物ではなく「化学工業原料素材」としてとらえ、電気化学的な手法等を導入し、当該成分の高収率での回収条件の策定を試みた。結果、生成物水溶液中のアルデヒド類は酸化反応により有機酸へ転化し、選択性向上が期待できることを見出した。現時点では、広範な操作条件下での実験、データ蓄積という段階までには至っていないものの、複合系のバイオマス変換技術の化成品誘導手法としての可能性は示すことができたと考えている。
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