セメント系固化材による地盤改良土から土壌環境基準を上回る六価クロムが溶出される場合があるため、公共工事では事前の溶出試験が必要とされている。しかし、溶出試験に用いる試料の前処理の方法によって溶出量が異なることから、実際の地盤からの溶出を推定する場合には、試験条件の影響を適切に把握しておくことが必要である。本研究では土壌環境基準を超える六価クロムが溶出されるケースが多いとされるセメント系固化材で安定処した火山灰質粘性土について、試料の乾燥方法、粒径、溶媒の初期pHが六価クロムの溶出量に与える影響を検討した。 乾燥方法は、風乾、炉乾燥、非乾燥とし、粒径は2mm、0.425mmで区分し、初期pHは6.0と4.0にした。通常用いられる環境庁告示第46号法試験では、乾燥方法として風乾、粒径は2mm以下、初期pHは5.8〜6.3となっている。初期粒径が異なっていても振とうによって泥土化し、安定処理土はセメント系固化材による高アルカリ化によって溶媒の初期pHの影響が見られなかったため、これらによる六価クロム溶出量の違いは見られなかった。しかし、乾燥方法の影響は見られた。最も溶出量が大きいものが風乾試料であり、次いで炉乾燥、非乾燥の順になった。すなわち、環境庁告示第46号法は最も安全側での結果を得ていることがわかった。しかし、そのメカニズムは不明であるとともに、これが火山灰質粘性土特有のものであるかどうかを確認する必要がある。
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