セメント系固化材による地盤改良土から土壌環境基準を上回る六価クロムが溶出される場合があるため、公共工事では事前の溶出試験が必要とされている。しかし、溶出試験に用いる試料の前処理の方法によって溶出量が異なることから、実験の地盤からの溶出を推定する場合には、試験条件の影響を適切に把握しておくことが必要である。昨年度は、土壌環境基準を超える六価クロムが溶出されるケースが多いとされるセメント系固化材で安定処した火山灰質粘性土について、試料の乾燥方法、粒径、溶媒の初期pHが六価クロムの溶出量に与える影響を検討した。その結果、初期pHの影響が見られなかったが、乾燥方法の影響は見られた。最も溶出量が大きいものが風乾試料であり、次いで炉乾燥、非乾燥の順になった。 一方で、六価クロムを含有しpHの高い溶出水は、周辺の地盤で緩衝、吸着を受けることが考えられる。特に、火山灰質粘性土は物質吸着能が高いことが知られている。本年度は、環境庁告示46号溶出試験などのバッチ試験、タンクリーチング試験、カラム通水試験を行って、分定処理土から溶出された水のpHや六価クロム濃度を測定するとともに、その溶出水の火山灰質粘性土による吸着性を検討した。その結果、セメント系固化材で安定処理した火山灰質粘性土から溶出した高いpH、六価クロム濃度の水は未処理の火山灰質粘性土と接触することでpH急激に、六価クロム溶出濃度は緩やかに減少することが確認された。カラム試験の場合には乾燥密度にも影響を受けるので、想定する現場に応じて適切な実験条件の設定が必要であることを明らかにした。
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