ハイドロキシアパタイトをスパッタリング法により、ガラス基板上にコーティングし、その消臭機能をガスクロマトグラフィーを用いて定量化した。臭気ガスには、ニンニク臭であるアリシン及びシックハウス病の原因とされているホルムアルデヒドに関して測定を行った。その結果、スパッタリングのコーティング条件により、その消臭性能が大きく異なることが明らかとなった。24時間の吸着時間に放電圧力が0.5Paと低い場合には、アリシンガスを32%しか吸着できないが、5Paと高い約77%の消臭効果があった。これに対し、ホルムマリンに対しては、反対の傾向を見せ、0.5Paでは94%、5Paでは、0%であった。これらの原因を探るため、放電圧力を変化させた時のコーティング層を0.01g以上採取し、X線回折法にてその結晶相を解析したところ、0.5Paの低い圧力では、HA成分が80%以上占めているのに対し、圧力が5Paと高い場合には、B-TCPが80%を占め、残り20%がHAとなっていた。 本結果より、燐酸カルシウムの結晶相の違いにより臭気の選択性があることが明らかとなった。本仮説の確認のため、HA及びB-TCP粉末を用いた消臭実験を行った。その結果、HAはアリシンガスに対し65%、ホルムアルデヒドに対し100%の消臭率、B-TCPは、アリシンガスに対し97%、ホルムアルデヒドに対し67%であった。 これらのことから、スパッタリングのコーティング条件を変えることで、目的とする消臭ガスに合わせた消臭膜の作製が可能であることが示唆された。
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