昨年度の研究結果から、スパッタリング法により作製したハイドロキシアパタイト(HA)薄膜が優れた消臭性を有し、コーティング条件により、臭気の選択性を変化させることが可能であることが明らかとなった。しかし、HA単体では臭い分子の吸着が飽和してしまうと、長時間の性能が発揮できないため、本年度は光触媒機能を持つ二酸化チタン(TiO2)薄膜をスパッタリング法により作製し、これをHAとのダブルコーティングすることにより、更なる消臭性能の改善を試みた。実験では、TiO2薄膜、HA薄膜、HA/TiO2薄膜の光透過性の評価及び紫外線下でのホルマリンガスに対する消臭性能の評価を行った。 光透過性実験では、HA/TiO2薄膜は可視光波長範囲(400〜800nm)で、平均して87%の透過率を示し、通常のガラス面に用いても十分な透過性を有することが明らかとなった。消臭実験では、4時間後、ホルマリンガスの残存量は、ガラス、TiO2薄膜、HA薄膜、HA/TiO2薄膜において、それぞれ、90%、21%、80%、0%を示し、HA/TiO2薄膜が最も高い消臭性能を示した。本結果より、本HA/TiO2薄膜は、ガラスを有する様々な空間に応用できる消臭材としての可能性が示唆された。本研究の結果により、特許出願「光触媒リン酸カルシウム薄膜」を行い、また、第21回ライフサポート学会において、バリアフリーシステム開発財団奨励賞を受賞した。
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