ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は微生物が生産する生分解性ポリエステルであり、バイオプラスチックとして利用できる。PHAの生合成系遺伝子群を植物に導入することにより、太陽光と二酸化炭素からPHAを直接合成する系を構築した。高い生産性を得るため、微生物から単離されたPHA生合成系遺伝子を改変し、野生型酵素より活性の高い変異酵素を創出した。これらの変異酵素の植物における機能を調べるため、小型で生育が早いシロイヌナズナによるPHA生産を試みた。高活性を有するAeromonas caviae由来の変異PHA重合酵素遺伝子を導入し、細胞質に酵素を局在化させた株は、野生型のPHA重合酵素遺伝子導入株と比較して、約10倍のPHAを蓄積することができ、蓄積量は10mg/gに達した。またんPseudomonas sp.61-3由来の高活性変異PHA重合酵素を葉緑体に局在化させた組換え株も、野生型のPHA重合酵素遺伝子導入株と比較して、約10倍のPHAを蓄積したことから、PHA重合酵素の高活性化により、植物内におけるPHAの蓄積量を一桁上昇させることができることがわかった。次に、幅広い基質特異性を有するPseudomonas sp.61-3由来のPHA重合酵素を用いて、高い柔軟性を有する共重合PHAの合成系を構築した。ペルオキシソームにPHA重合酵素を局在化させたシロイヌナズナの組換え株は、0.2mg/gと少量ではあるが、炭素数が4〜8のヒドロキシアルカン酸をモノマーとする共重合体を、植物では初めて蓄積した。さらに共重合体を高生産するために、当研究室でタンパク工学的手法により創出された新規アシル基転移酵素を葉緑体に局在化させる系を構築した。この組換え株は、炭素数が4〜8のモノマーを含む共重合体を2mg/g蓄積し、共重合体の高蓄積に初めて成功した。
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