走査型トンネル顕微鏡(STM)を用い、単一分子レベルの化学(ナノケミストリ)に関する研究を行った。現在の目標は、STMを用いて、C_<60>分子が6員環となっている超分子を作り出し、その構造や電子物性に関する知見を得ることである。そこで、グラファイト上に成膜したC_<60>薄膜を舞台として、本年度は次の2点に取り組んだ。 1.C_<60>分子同士の重合や、C_<60>分子の引き抜き。 2.光照射によりC_<60>分子を重合させてC_<60>重合薄膜を作製し、STM観察を行う。 1.に関してはC_<60>を重合、引き抜きに成功し、任意の位置に化学結合を作る下地を作ったといえる。しかし、その両者を引き起こす条件範囲は重なっており、独立して制御することが現状では難しい。今後パルス電圧の印加などの工夫を行い、自在な分子を作ることを目指す。 2.に関しては重合薄膜のSTM像と報告されている第一原理計算を比較し、信頼度の高いSTM像を得ることに成功した。1.で開発した手法を重合薄膜のC_<60>間の結合を切断することに今後挑戦し、重合薄膜からC60超分子を"切り出す"ことに取り組む。
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