研究概要 |
研究代表者の以前の研究で,単一CdSe/ZnS/TOPO系ナノ結晶に光照射すると,突然数百ミリ秒程度の周期で激しく点滅し始めたり,その明滅の周期が段階的に増大したりする,ナノ結晶ごとに個性を持つ新奇な発光現象を観測した.この現象の原因を追求することで,これまで不明な点が多く残されている単一ナノ結晶の発光メカニズムが解明できると期待している.そこで,以下の項目を3年間で遂行する予定である. 1.発光量子効率の高いナノ結晶の作製 2.単一ナノ結晶の時間分解発光測定系の構築 3.単一ナノ結晶の発光の時間強度変化の測定(CW励起,ミリ秒オーダー)及び発光の時間分解計測(パルス光励起,ナノ秒オーダー)特に3では,(a)光照射効果.(b)周辺環境依存性(c)ナノ結晶粒径依存性等を調べることで,異常な発光の振る舞いの原因究明を行う. 本年は,主に3(b)の周辺環境依存性の計測を推進した.水蒸気を含む雰囲気下で,単一ナノ結晶に光照射を行ったところ,発光の点滅が抑制され,挙一ナノ結晶の発光し続ける時間が飛躍的に増加することを見いだした.この結果は,ナノ結晶表面への水分子の光吸着が,単一ナノ結晶の発光特性を激変させた要因であることを意味する.本研究が,単一ナノ結晶における発光メカニズムの解明と,発光制御に向けた鍵となり得る重要な結果であることが認められ,2006年6月にフランスで開催される国際会議Hole Burning, Single Molecule and Related Spectroscopies : Science and Applications(通称HBSM)で,招待講演に選ばれている.
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