研究概要 |
本研究は、錯体結晶の「異種金属イオンが、有機配位子により均一の構造および組成で配列する」自己組織化能に着目し、界面技術を用いてそれらを微小化した錯体ナノ微粒子を研究対象とした。バルク錯体結晶には見られない特異的なナノ物性と、更にそれらを前駆体として、種々の複合金属ナノ材料(複合金属酸化物材料、複合金属ナノ微粒子)への展開を目的とした。本発表では、非イオン性界面活性剤を用いた逆ミセル法により、アルキル配位子により保護されたFe/Cr-CN-Co型金属錯体ナノ微粒子を合成し、金属組成制御と基礎物性測定を行った。 合成方法として、0.4 M polyethylene glycol mono 4-nonylphenyl ether(PEG: HO(CH_2CH_2O)_<n->C_6H_4C_9H_<19>,n=5)/cyclohexane溶液2mLに対し、0.1 M K_3[X(CN)_6](X=Fe and/or Cr,Fe:Cr=1:0,3:1,1:1,1:3,0:1)水溶液70μL、又は0.1 M CoCl_2水溶液70μLを加え、逆ミセル溶液を精製した。作製した二種の逆ミセル溶液を混合、反応させ、アルキル配位子(ステアリルアミン等)により保護された錯体ナノ微粒子粉末を単離した。合成物の各種物性測定(TEM観察,ICP,元素分析,IR,UV-Vis,XRDスペクトル,SQUID)を行った。 生成物は、極性溶媒(CH_2Cl_2,CHCl_3,THF)等に再可溶であり、TEM観察により粒子径10から15nm(Fig.1)、XRD測定からfcc構造を有した。合成時におけるUV-Visスペクトルは、500nm付近にFe(II)からCo(III)への電荷移動遷移が観察され、その吸収極大波長(λ_<max>)は、Cr成分の混合比に比例し、金属成分が粒子中に均一に分散していることが示された。IRスペクトルは、主に2130cm^<-1>および2200cm^<-1>付近に、Fe-CN-CoおよびCr-CN-Co各々のCN伸縮に由来する二種類の吸収を示し、その強度が金属成分比に対応して変化することから、UV-Visスペクトルの結果を支持した。金属成分比および保護剤の種類により、錯体ナノ微粒子の物性(磁性・色・形状)制御が可能であることがわかった。
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