研究概要 |
パルスモーターによる5軸制御の超高真空対応のサンプル・マニピレータを新たに開発した。このマニピレータは、サンプルのX,Y,Z平行移動、方位の回転と面内回転をパルスモーターで行うことができる。水平面内の平行移動は±10mmの移動が可能であり、パルスモーターに送る1パルスで、0.02μm移動するように設計した。また、垂直方向は100mmの距離を0.1μm/パルスで移動し、方位の回転は±180°回転が可能で約0.00006°/パルス、面内回転は360°以上回転できる構造で、約0.004°/パルスで回転するように設計した。 SPring-8の2004Bでこのマニピレータを用いた実験課題申請を行い、採択された。しか.しながら、SPring-8が台風被害に遭ったため、実験を2005Aに再申請し、採択された。申請内容は以下の通りである。マニピレータをSPring-8のBL25SUの2D-PES装置に取り付け、サンプルを面内回転させながら、光電子放出分布を計測する』。これにより、光電子放出の角度分布を全方位にわたって観測可能となり、さらに検出器の感度ムラを相殺することができる。高精度な光電子放出の角度分布は光電子ホログラムとして解釈可能である。我々が提唱している光電子ホログラムから原子配列計算するアルゴリズムを使えば、0.1Åのオーダーで立体的に原子配列が得られる。この測定法は表面や不純物の原子配列の新たな決定法になる可能性があり、この検証実験を申請した。申請した課題名は、「Cu結晶を測定試料とした、光電子ホログラムの高精度な測定法の研究」である。 現在は、マニピレータの制御や、2D-PES装置やBL25SUの挿入光源、分光器との連動が可能な、測定プログラムの開発を終わり、いつでも実験可能な状態となっている。2005年4月にはこのマニピレータを用いた初のデータが出る予定である。
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