リボソームは生体物質であるリン脂質やコレステロールにより構成されており、生体適合性、生体内分解性に優れているので毒性が無く、また薬物を内部に封入することができるので、副作用が危惧される薬物であっても、標識となる生理活性物質を提示しておけば、選択的な病巣部位への輸送が可能である。一方で、糖鎖はセレクチン、ガレクチンに代表される糖鎖結合タンパク質との特異的な相互作用により結合するマーカーとしての役割が、近年、分子生物学の分野において脚光を浴びてきている。そこで、リボソーム表面に標識分子として糖鎖を高密度にクラスター化することができれば、ターゲット部位に対して効果的なピンポイント攻撃が期待できる。本研究では、糖鎖クラスターナノデバイス合成の一環として、糖鎖を集積化させる土台部分に、rigidな環状構造を有するシクロデキストリン(CD)を用いて、CD上に生理活性糖鎖、および長鎖脂肪酸を結合した糖鎖結合型両親媒性CD誘導体の合成を行うとともに、それらの自己組織化により、リボソームの調製を行う。初年度は、α、β、γ-CDに関して、長鎖脂質酸部分としてはパルミチン酸(C16)、糖鎖部分としてはガラクトース、およびN-アセチルグルコサミンの効果的な導入法の検討を行った。さらに昨年度は、合成手法の大幅な改善を行うことにより飛躍的に目的物の収率向上を促進することができ、また、二次元構造である単分子膜の形成を行い、膜の安定性に関して基礎的知見を得ることができた。本年度は最終年度にあたり、糖鎖被服リボソームの構築を目的として研究を行い、ガラクトース結合型両親媒性CD誘導体を用いてジパルミトイルポスファチジルコリンとの混合リボソームの調製を行い、透過型電子顕微鏡により形状を観察したところ、直径約200〜500nmの球状リボソームを形成していることが確認された。
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