研究概要 |
光合成中心タンパク(RC)分子を用いた生体超分子素子の実用化を目指すには出力電流値の向上が必要である。そこで金属電極表面をπ共役系分子で化学修飾することによりRCタンパク分子の配向を保ったままキャリア注入障壁を引き下げることを狙った。Au(111)基板上に自己組織化膜(SAM)を作成し、その上に光合成細菌Rhodobacter sphaeroidesから取り出したRCタンパク分子を吸着させた。SAM材料としてπ共役系の2-Mercaptopyridine,4-Mercaptopyridine, Thiocyanuric acidの3種類、π共役系を持たない2-Mercaptoethanolとの計4種類を用い比較した。いずれのSAMも高密度かつラフネスが単一分子サイズ以下でRCタンパク分子を電極上に固定することができた。π共役系のSAMを用いた金属(Au(111)基板)/SAM/RC/金属(導電性カンチレバー)構造の場合、いずれもCAFMにより測定された電流値が2-Mercaptoethanolを用いた場合より高くπ共役系は金属/RCタンパク分子界面でのキャリア注入障壁を下げる効果があることが分かった。ただしThiocyanuric acidを用いた場合は電流が2-Mercaptoethanolよりも高いが整流性を示さず、配向していないと考えられる。2-Mercaptopyridineは4-Mercaptopyridineよりも高い電流(500pA at 1V)を示した。この2-Mercaptopyridineを用いてカンチレバーの金コート表面も化学修飾し金属/SAM/RC/SAM/金属構造でCAFM電流を測定したところ、電流値が1nA(at 1V)に達した。以上よりRCタンパク分子の機能性を保ったまま、配向制御し注入障壁を下げることに成功した。
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