昨年度の実験から、水晶発振子金電極上に存在する分子とその量に応じて、レーザー光による水晶発振子の振動数変化が異なることが明らかとなった。今年度はこの現象の原理を解明するとともに、微弱なレーザー光による表面化学種の測定とその化学状態の変化を利用した、新しい表面解析法及び表面制御技術を確立することを目的に研究し、以下の成果を得た。 1)27MHzの水晶発振子はその金電極表面に吸着する物質量を、ngオーダーで実時間観測することが出来る。大気中あるいは液体中で発振している水晶発振子の金電極表面に1mW程度の微弱な半導体レーザーを照射すると、振動数が10-20Hz上昇し、照射を中止すると数秒で元の振動数に減衰することが分かった。さらにこの変化量は、表面への分子の相互作用の強さと分子の存在量等に依存する事も明らかとなった。 2)微弱レーザー光の水晶発振子に与える影響の詳細を調べるために各種気体、溶液中など様々な条件においてネットワークアナライザにより水晶発振子の電気的な特性を測定し、電気機械音響類似から考察してレーザー光の物理的な効果を確認した。その結果、レーザー光照射による振動数の増加(重量減少)は、金基板上に結合していた分子の脱着によるものであることがわかった。
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