本研究では、無機基板上に蒸着した有機半導体薄膜を焼鈍することによって成長するナノ結晶(ナノウィスカー)に及ぼす磁場効果に関する研究、及び、有機半導体ナノ材料の配向制御に関する研究を行った。本年度は、昨年度に得られた成果の成果報告と「磁場中アニーリング法によるペンタセン結晶性薄膜の育成に及ぼす磁場効果」、「KCl(001)基板上におけるペンタセン結晶性薄膜のグラフォエピタキシー」についての研究を行った。以下、これらの研究によって得られた成果について報告する。 1.磁場中アニーリング法によるペンタセン結晶性薄膜の育成に及ぼす磁場効果 真空蒸着法により製膜したペンタセン結晶性薄膜を5テスラの磁場中で焼鈍を行った。その結果、無磁場下では、樹枝状や先端分岐型などフラクタル的な結晶が成長するのに対して、磁場中でアニーリングを行った場合、フラクタル的な結晶の下に、円形の二次元結晶が現れることを明らかにした。 2.KCl(001)基板上におけるペンタセン結晶性薄膜のグラフォエピタキシー グラフォエピタキシー(graphoepitaxy)とは、基板(単結晶・非晶質によらない>にややマクロな立体的構造(結晶の劈開ステップ、微細加工パターン等)を持たせることにより、結晶性薄膜に基板との配向性を持たせる方法である。一般的には、金属やSi等の無機結晶に用いられてきたが、本研究では、有機結晶/無機結晶基板の系でのグラフォエピタキシーについて研究を行った。得られた結果として、KCl劈開ステップの高さが高くなるほど、ステップ上に核生成したペンタセン結晶の数が増加することと、ステップ上にできた結晶はある特定の方位に配向していることを透過型電子顕微鏡の暗視野観察により明らかにした。この方法は、磁場中アニーリングの効果をさらに促進する方法として、今後さらに検討を行う予定である。
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