研究概要 |
1.双安定性を示すCu(I/II)錯体の合成と酸化還元特性 Cu錯体が酸化状態に依存して異なる配位構造をとることに着目し,Cu(I/II)錯体が双安定性を示すピンセット型の4座配位子(1,2-bis((6-nitroquinolin-2-yl)methylthio)ethane,1)を設計・合成した.さらに,配位子1とCu(II)(CF_3SO_3)_2から,Cu^<II>(1)錯体を調製した.アセトニトリル中において,UV-vis吸収スペクトルを測定したところ,d-d遷移に帰属される635nmの吸収が現れた.スペクトルの経時変化を調べた結果,2時間程度でCu(II)からCu(I)錯体へ変化することが分かった.また,蛍光測定において,Cu^I(1)錯体に特有の強い蛍光が現れた.すなわち,Cu^<I/II>(1)錯体は酸化状態に依存して,分光学的特性が大きく変化することが明らかとなった.つぎに,Cu^<II>(1)錯体のCV測定を行ったところ,+258mV(vs.Ag/Ag^+)に還元波が観測されたが,明確な酸化波は認められず,不可逆なレドックス特性を示すことが示唆された.配位子1のニトロ基をアミノ基に変換し,さらに適切なスペーサー部との連結を施せば,Cu(I/II)錯体が双安定性を示すものと期待される. 2.電極表面におけるサンドイッチ型金属錯体の運動特性 フェロセンの上下シクロペンタジエニル(Cp)環が自由回転することに着目し,疎水的な側鎖を導入した新しいフェロセン誘導体を合成した.金電極上に自己組織化膜を調製するため,片末端にS-S基を導入した.QCM測定により,電極表面への自己吸着を確認し,得られた単分子膜についてCV測定を行った.+670mVにフェロセニル基に由来する可逆的な酸化還元波が認められた.今後,支持電解質の種類や濃度,また電解液の極性などを系統的に変化させ,Cp環の動的挙動を評価する.
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