1.シリコンナノワイヤー(ナノチェーン)を作製する方法の確立 レーザーアブレーション法によるシリコンナノワイヤー(ナノチェーン)の最適作製条件を確立するため、「レーザーフルーエンス」、「ガス種およびガス圧」を変化させ試料の作製を行った。その結果、水素ガスが存在する雰囲気中で、かつ670Paよりも高い圧力でのアブレーションにより、平均粒径4.6mmのナノ粒子が数μm程度連なった構造を持つナノチェーンが加熱処理なしで生成できることがわかった。他のガス雰囲気中ではナノ粒子の生成は認められるもののチェーン状の生成物は形成されなかった。またレーザーフルーエンスによる生成物の差異は見られなかった。そこで希ガス中に水素ガスを混入してアブレーションを行うと水素ガス濃度の上昇とともに試料の形態は粒子状からチェーン状へと変化した。また試料の電子顕微鏡観察および各種光学的特性評価より水素ガス中で作製したシリコンナノチェーンはシリコンナノ結晶をコアに持ち表面がほぼ水素で終端されていた。これらの結果は、ナノチェーンの形成にはシリコンナノ結晶表面を覆う水素原子が本質的な役割を果たしていることを示唆するものである。 2.水素終端シリコンナノチェーンの光学特性の評価 本年度は水素終端シリコンナノワイヤーの主に室温でのPL特性と顕微ラマン散乱スペクトルによる試料の評価を行った。ラマン散乱スペクトルからは本試料が粒径の減少による1次元的なフォノン閉じ込め効果を示唆する結果を得た。またPL測定では生成直後の試料から1.6eVにサイズ効果によるものと思われる発光が見られた。また発光スペクトルの経時変化から表面酸化の進行に伴って複数の特徴的な発光が新たに現れた。この発光の経時変化とFTIRスペクトルによる表面化学結合状態を詳細に調べた結果、1.8eVおよび2.4〜3.2eVに現われる発光の起源が表面酸化膜中の欠陥によるものであることがわかった。 3.水素終端シリコンナノチェーンの電気伝導特性の評価 30nmのギャップを持つ金電極間にナノチェーンを堆積した試料を作製しその電気伝導特性の温度依存性を測定した。その結果、低温(<50K)においてanormalyな特性を得たが詳細は現在検討中である。
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