本年度は申請者らが初めて観測した、光通信波長域3次元フォトニック結晶光導波路の伝搬について、詳細検討を行った。その結果、観測された結果は、理論計算とよく対応しており、また積層数を増やすことで、低損失伝搬が可能であることを見出した。詳細は以下の通り。 (1)実際の試料構造を仮定し、3次元FDTD法によって導波路のバンド図を計算し、実験結果と詳しく比較を行った。その結果、作製した導波路は多モード導波路であるが、導波モードの群速度・波数などの点から、観測された導波光に対応すると考えられる導波モードは1つであることを見出した。この導波モードに対して、伝搬損失の波長依存性をFDTD法で計算し、実験結果と比較した結果、良い対応関係が得られ、このことから、測定結果が実際の導波モードと対応していることを明確にした。 (2)積層数と導波損失の関係について計算を行い、現在の9層積層構造では伝搬損失が非常に大きく、実験結果と同様、100μm以下程度の伝搬距離しか期待できないこと、しかし伝搬損失は積層数に対して指数関数的に減少し、25層積層することで500岬以上の低損失伝搬が可能であることを示した。この伝搬距離は、超小型光回路としては十分なものであると考えている。 (3)上記理論計算と平行して、作製精度の向上についても検討を行い、ウエハアライメント装置を改良することで、100nm程度という非常に高い精度で位置合わせ・積層可能にした。また、フォトニック結晶パターン形成に用いている電子線描画装置の大面積描画時における描画精度の向上にも取り組み、10mm離れたパターン間での位置ずれが50nm以下(20万分の1)という高い精度を実現した。
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