本年度はセルソータマイクロチップの各構成要素の作製技術を確立し、それぞれの動作確認を行うことに重点を置いて研究し、以下の成果を得た。 1.半導体レーザの作製と動作特性の測定 GaInP量子井戸導波路構造基板を用い、表面放射赤色分布ブラッグ反射型レーザを設計・作製した。低損失受動導波路形成のためのZn拡散による量子井戸無秩序化技術を確立・適用するとともに、微細加工技術により周期0.2μmの曲線表面グレーティングを作製した。CW駆動によりしきい値30mAで発振し、波長655nm、サイドモード抑圧比35dBの良好な単一モード発振が得られた。 2.微小流路作成技術・送液技術の確立 半導体基板上に、SiO_2をマスクとしてリン酸・塩酸混合液を用いたウェットエッチングにより、幅・深さとも30μm程度の微小流路を形成した。透明で平滑面に自己吸着性のあるPDMS(シリコーンゴムの一種)をふた材として用い、6μm径マイクロビーズの懸濁液を液漏れすることなく送液することに成功した。またモールド法によりPDMSに形成した微小流路に透明シートでふたをしたマイクロチップを作成し、これに懸濁液を送液することにも成功した。 3.マイクロビーズ通過検出実験 作製した表面放射赤色分布ブラッグ反射型レーザ、PDMS微小流路、フォトダイオードを組み合わせ、マイクロビーズ通過検出実験を行った。レーザをCW駆動させ、レーザからの表面放射光を微小流路に照射し、フォトダイオードで受光した。マイクロビーズ懸濁液を微小流路に流したところ、ビーズがレーザ光を遮ることによるフォトダイオード光電流の減少が1秒間に20回程度観測され、マイクロビーズ通過検出に成功した。
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