研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、バイポーラスケールを用いた多基準意思決定問題のモデル構築に向けた基礎理論の整備ならびに関連研究のサーベイを重点的に行った。具体的には以下のとおりである: 1.双容量のメビウス変換と双極メビウス変換(本研究において定義された概念)に関して、ゲーム理論との関連から以下のような示唆を与えた:メビウス変換は、マルチチョイスゲームのような参加レベルがyes, no以外のambiguousなチョイスがあるような状況での分析に有用なツールとなり得る;双極メビウス変換はpositive, negative, neutralのような、中立点を挟んで逆方向の意思を示すような状況での分析に有用なツールとなり得る。 2.「基準の間にまったく相互作用のない場合」から、「すべての基準または基準の集まりの間に完全に相互作用がある場合」の間の場合のモデル群としての包除族モデルの構造を特徴付けるための基礎となる諸概念を整理した。 3.バイポーラスケールの下での、各基準もしくは基準の集まりが、全体の評価に対して与える影響・効果を表現するための指標の解析・導入のためのサーベイならびに基礎理論の展開に着手した。これにより、容量の場合のように、基準間の相互作用の大きさをあたえる指標が公理的に導入されることが期待できる。 4.従来の双容量に関するChoquet積分は、双極メビウス変換の観点からの自然な拡張となっているが、これを、メビウス変換からの自然な拡張となるタイプの双容量に関するChoquet積分の提案・特徴づけに着手した。
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